
「固定IPを設定してください」と言われて、IPアドレスだけを渡された経験はありませんか?
「これだけで大丈夫かな…」
「情シスに聞き返すのも気が引けるし…」
そんな不安を抱えたまま設定を進めるのは危険です。
実は、IPアドレスだけでは固定IP設定は完了しません。
本記事では、固定IP設定に必要な4つの情報と、それぞれがなぜ必要なのかを、初心者にも分かりやすく解説します。さらに、現場で使える確認テクニックも紹介します。
固定IP設定に必要な「4点セット」とは
固定IPを正しく機能させるには、以下の4つの情報が必須です:
- IPアドレス
- サブネットマスク
- デフォルトゲートウェイ
- DNSサーバー
この4つが揃って初めて、ネットワーク通信が正常に行えます。WindowsでもMacでも、ルーター直結でも同様です。
なぜIPアドレスだけでは通信できないのか?
ネットワーク通信を理解するため、分かりやすいたとえ話で説明しましょう。
【たとえ話】宇宙人ジョーンズの引っ越し物語
ある日、宇宙人のジョーンズは地球の会社に就職し、社員寮に入居しました。
住所:東京都港区 ビバリーハイツ777 301号室
(これがIPアドレス:192.168.149.37 ような羅列に相当)
① サブネットマスク=「町名と番地の境界線」
寮の規則書にはこう書かれていました:
「この寮の住所は、『東京都港区ビバリーハイツ777』までが町名(ネットワーク)で、最後の数字だけが番地(個別の部屋)=そのPCです」
つまり:
- 192.168.149 → 町名(ネットワークアドレス)
- 47 → 番地(ホストアドレス)
この「どこまでが町名で、どこからが番地か」を決める仕切りがサブネットマスク(255.255.255.0)の役割です。(つまり4つの数値の塊のうち、0の位置の番号⇒ここでいうと4番目の塊がパソコン固有の番号、ということです)
💡 技術的には: サブネットマスク 255.255.255.0 は「/24」と表記されることもあります(CIDR表記)。これは「最初の24ビットがネットワーク部」という意味です。
サブネットマスクがないと、機器は「通信相手が同じ町内(ネットワーク内)なのか、別の町(別ネットワーク)なのか」を判断できません。
同じ町内の住人には直接会いに行けます(同一サブネット内通信)。わざわざ町の外に出る必要はありません。
② デフォルトゲートウェイ=「町の出口(正面玄関)」
ジョーンズは寮の外の世界も見たくなりました。しかし、建物には複数の扉があります:
- 非常口
- 勝手口
- 裏口
- 倉庫のドア
どれも鍵がかかっていて使えません。
隣人に聞くと、こう教えてくれました:
「この町から外へ出るなら”エントランス”と書いてある正面玄関だけだよ」
これがデフォルトゲートウェイです。通常はルーターのIPアドレス(例:192.168.10.1)が設定されます。
デフォルトゲートウェイが未設定だと:
- ✅ 社内(LAN内)通信はできる
- ❌ インターネットには繋がらない
という典型的なトラブルが発生します。
③ DNS=「名前を住所に変換する電話帳」
この惑星の家には表札(名前)が書いてありますが、ジョーンズは漢字が読めません。
しかし用意周到な彼は、カバンに2冊の電話帳を入れてきました。これで、そのうちの一冊が例えば外の雨で濡れて読めなくなっても、もう一冊で参照できます。
- タウンページ電話帳(優先DNS:8.8.8.8)
- ハローページ電話帳(代替DNS:8.8.4.4)
辞書で「佐藤」を引くと:
「佐藤」= 東京都〇〇区△△町…
名前が住所(IPアドレス)に変換できました。これがDNS(名前解決)の仕組みです。
もしタウンページが雨で濡れて使えなくても、ハローページがあれば調べられます。これが「優先DNS」と「代替DNS」を2つ設定する理由です。
DNSが設定されていない、または間違っていると:
- ✅ IPアドレス直接指定なら通信できる(例:192.168.1.1)
- ❌ ドメイン名(google.comなど)が開かない
という現象が起きます。
まとめ:4つの情報の対応関係
| たとえ話 | ネットワーク用語 |
|---|---|
| 町名と番地の境界線 | サブネットマスク |
| 同じ町内の移動 | 同一サブネット通信 |
| 町の出口(正面玄関) | デフォルトゲートウェイ |
| 町の外の世界 | インターネット |
| 表札(名前) | ドメイン名 |
| 電話帳 | DNSサーバー |
| 2冊の電話帳 | 優先DNS/代替DNS |
各項目の技術的な詳細解説
① IPアドレス
ネットワーク上での機器の識別番号です。
例: 192.168.10.50
⚠️ 重要: 同じネットワーク内で重複すると、両方の機器が通信できなくなります。あなたの機器だけでなく、重複相手の通信も止まってしまうため、設定には細心の注意が必要です。
② サブネットマスク
「どこまでが同じネットワーク(町)か」を定義します。
例: 255.255.255.0
この情報がないと、通信相手が同じLAN内なのか、ルーターを経由する必要があるのかが判断できません。
③ デフォルトゲートウェイ
LAN外部への通信時に使用する出口です。通常はルーターまたはファイアウォールのIPアドレスを指定します。
例: 192.168.10.1
④ DNSサーバー
ドメイン名(例:google.com)をIPアドレスに変換する役割を持ちます。
例:
- 8.8.8.8(Google Public DNS)
- 8.8.4.4(Google Public DNS代替)
【現場テクニック】情報が足りない時の確認方法
方法1:既に繋がっているPCの設定を確認する
最も確実な方法は、同じネットワークで既に正常動作している機器の設定を参考にすることです。
Windowsの場合
Windowsキー + Rを押すcmdと入力してEnterキーを押す- コマンドプロンプトで以下を実行:
ipconfig /all表示される情報から確認:
- IPv4 アドレス → 使用中のIPアドレス(新規設定時は別の番号にする)
- サブネット マスク → そのまま使用
- デフォルト ゲートウェイ → そのまま使用
- DNS サーバー → そのまま使用
Macの場合
- 「システム設定(または環境設定)」を開く
- 「ネットワーク」をクリック
- 接続中のネットワーク(Wi-Fiまたは有線)を選択
- 「詳細」ボタンをクリック
- 「TCP/IP」タブで確認
方法2:情シス・回線業者に確認する
以下の質問をすれば、「理解している人」として信頼されます:
- サブネットマスクはいくつですか?
- デフォルトゲートウェイのIPアドレスは?
- DNSサーバーは何を指定すればいいですか?
- そのIPはLAN内固定ですか?グローバル固定ですか?
- 既に使用中のIPアドレスの範囲を教えてください(重複を避けるため)
【現場でよくある失敗】IPアドレスだけ渡された時の対処法
よくあるのが、このパターンです:
「固定IPです。IPは 192.168.10.50 です。設定お願いします」
これは情報不足です。遠慮せず、必要な情報を確認しましょう。
「聞きにくい…」と思うかもしれませんが、不完全な情報で設定を進める方がはるかにリスクが高いです。設定ミスによりネットワーク全体に影響が出る可能性もあります。
よくある誤解:DHCPを無効にするだけでは固定IPにならない
「DHCPを無効にすれば固定IPになりますよね?」
これは半分正解、半分間違いです。
- DHCP無効 = 自動取得しない
- 固定IP = 正しい情報を手動で設定する
DHCPを無効にしただけでIP欄が空白なら、当然ネットワークには接続できません。必ず4点セットすべてを入力する必要があります。
設定ミスのリスク:なぜ正確な設定が重要か
固定IP設定を間違えると、以下のような問題が発生します:
IPアドレス重複の場合
- ❌ 自分の機器が通信できない
- ❌ 重複相手の機器も通信できなくなる
- ❌ ネットワーク全体が不安定になる可能性
デフォルトゲートウェイ間違いの場合
- ✅ LAN内通信は可能
- ❌ インターネット接続が不可能
DNS間違いの場合
- ✅ IPアドレス直接指定は可能
- ❌ ドメイン名での接続が不可能(Webサイトが開けない)
だからこそ、不確かな情報で設定せず、必ず確認することが重要です。
固定IPが必要になる代表的なケース
以下のような用途では、「常に同じIPアドレスであること」が前提条件です:
- VPN接続(拠点間VPN・リモートアクセス)
- 社外からのアクセス許可(IP制限)
- サーバー・NAS・監視カメラ
- 業務用複合機・POSシステム・検証環境
- 社内システムのライセンス認証(IP紐付けの場合)
まとめ:固定IP設定は「4点セット」が必須
重要なポイントをまとめます:
✅ 固定IP設定には4つの情報が必須
✅ IPアドレスだけでは通信は成立しない
✅ 情報が不足している場合は必ず確認する(遠慮は不要)
✅ 既存PCの設定をipconfig /allで確認するのが最も確実
✅ 設定ミスは自分だけでなく他の人にも影響する
「IPアドレスだけ渡された」場合、それは相手の説明不足です。あなたのミスではありません。
むしろ、「サブネットマスクとゲートウェイも教えてください」と確認できる人こそ、ネットワークを理解している信頼できる担当者です。
遠慮せず、必要な情報をしっかり確認しましょう。それが、トラブルのない確実なネットワーク設定への第一歩です。












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